最高裁判所第三小法廷 昭和43年(オ)381号 判決 1968年9月24日
上告人
奥西豊
代理人
高坂安太郎
被上告人
株式会社
岡田羅紗店
代理人
奥村孝
安藤真一
小松三郎
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人高坂安太郎の上告理由第一点について。
被上告会社と上告人との間に被上告会社の代理人訴外岡田耕平を介して本件仮換地のうち原判決別紙図面表示の(イ)および(ロ)に該当する部分の売買契約が成立したが、右部分が従前の土地二筆のうちいずれの土地のどの部分に該当するかについて当事者間に合意が成立したことについて当事者双方とも主張も立証もしない旨の原審の判断は、その挙示する証拠関係および本件記録に照らして首肯することができる。
そして、原審の適法に確定した事実関係によれば、右売買契約の対象となつた本件仮換地の当該特定部分が従前の土地二筆のうちいずれの土地のどの部分に該当するかを確定することができないというのであるから、このような場合には、仮換地全体の面積に対する当該特定部分の面積の比率に応じた従前の土地の共有持分につき売買契約が締結され、その持分について、処分の効果が生ずるとともに、従前の土地についての持分に基づいて仮換地の当該特定部分を使用収益する権能を認める合意があつたものと解するのが相当である。したがつて、これと同趣旨の見解に立つ原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
同第二点について。
当事者の申立、主張等に矛盾する点があるとか、不明確な点があるなど特別の事情のないかぎり、裁判所は必ずしも釈明権を行使する職責を負うものではないと解すべきところ、本件訴訟の経過に照らすと、右のような特別な事情のないことが明らかであるから、原審が上告人に所論の点につき釈明する職責はなかつたものというべく、所論引用の最高裁判例は本件と事案を異にし、適切ではない。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(横田正俊 田中二郎 下村三郎 松本正雄 飯村義美)